バール・ジェラテリア・アンティカ

代官山のバールである。日本ではまだまだ珍しいナポリ名物スフォリアテッラやシチリアのカンノーロが食べられる。しかも格安。かなりお薦めの店である。カウンターで先払い、セルフサービスだからこそ可能な価格設定なのであろう。そんなお店なのに5時間も居座ってしまっていかにも迷惑な客である。友人と話をしている間、厨房から何かお菓子を焼くような香ばしい良い匂いが漂ってきたりして、友人をそそのかして一体何を焼いているところなのかお店の方に聞きに行かせ、焼きたてのお菓子を食べたりもした。
我々が入店したとき、店内にはイタリア人の男女がいたのだが、これが面白かった。あまりの寒さに友人はイタリアン・ホットチョコレートを注文したのだが、このイタリアンの説明として私がヌテッラの話をしたときである。ヌテッラとはイタリア人にえらく好まれているチョコレートクリームで、瓶詰めになってスーパーなどで売られている物である。強烈な甘さのそれに対するイタリア人の情熱は日本人には理解しがたいものがあるようだ。NHKラジオのイタリア語講座のテキストに連載を持っているアレッサンドロ・ジェレヴィーニなどは冬の寒い日に思い余ってヌテッラを瓶ごとレンジにかけて一気飲みしてしまったことがあるらしい。話は戻るのだが友人に向かって「ヌテッラ」という語を私が発した途端にだな、店内にいたその二人のイタリア人が私の方にくるっと向き直ったのだ。吃驚した。そんなに好きか、ヌテッラが。
日本でバール風とか言っても妙に飲み物が高くてこじゃれていたりして全然バールとは違うのだが、この店ならばバールと言っても差し支えないだろう。セガフレード・ザネッティなども店舗数が少なかった頃は結構良かったが、なんといってもあそこはチェーン店である。チェーンよりは断然、今日のこの店の方が良いだろう。近所に住んでたら通っていたことだろう。良いお店でした。