フランス人にびびる

昼のオペラはヤナーチェク。初めて観た。日本ではヤナーチェクなんて滅多にやらないからね。私が観たのは国民劇場で、国立のオペラハウスではアイーダがかかってたけど、ここでアイーダなんか観てもしょうがないでしょう。面白いけどさ、あのオペラ。派手だし。で、ヤナーチェクだが、なかなか面白い音楽であった。利口な女狐の物語。これも上に書いた料理のときと同じだけど、身震いしてゾクゾクするほどの歌い手と出会えたかと言うとそれはなかったのだが、やっぱり精神的に満たされていたので幸せだったのですよ、ワタクシは。外つ国でオペラを観る幸せですよ。
しかしだな、昼間の公演でチケットも安かった所為で客席に幼児が目立った。私の右隣にもアメリカ人の大人2人未就学児童5人の団体さんがいて、案の定五月蝿かったのだ、子どもが。私はここで息巻くのではなく、これくらいの年頃からオペラに馴染むからこそオペラが高級な趣味にならずに済むのであろう、感心感心、と頑張って穏やかな心境に自分を保っていた。本心を言うと滅茶苦茶五月蝿かったんだけどさ、時には歌手の声を消すくらいの奇声を上げてたから。ある意味すごい才能かも。あんなに小さい身体でそこまで大きい声が出せるなんて。
ここまで書くとこの公演での問題要素はこの未就学児童だと思われるが、そうではない。私の真後ろに座っていたフランス人男性だ。彼はこの子どもたちに我慢ならなかったらしく、ずーっと自分の彼女に子どもの悪口言ってんの。私としてはその声の方が癇に障るんだけどさ。で最終的に彼はかなり大きい音で「シーッ!!」と発し、それまでずっとフランス語だったくせに唐突に“It's crazy!!”とか言ってんの。陰険じゃないすか?やり口が。直接文句言えばいいのに言わず、聞こえよがしにあからさまに英語で悪口。未就学児童を連れていた母親のうちの一人も「子どもなんだから仕方ないでしょ!」と言いながらも仕方がなく会場を去っていった。
今でこそ私はこのフランス人に対して冷静に批判ができているが、あの場にいた瞬間は「シーッ!!」とやられて子どもよりも私の方がびびった。それから後も決して音を立ててはいけない、と半ば強迫観念にかられてしまったよ。しかし私の左隣のアメリカ人のおばちゃん2人組は平気でぺちゃくちゃお喋りしてた。おいおい、大人には注意しないのかよ、こっちにも注意してくれよ、とフランス人に対して心の中でそう言ってみたが意味ない。だって今度はフランス人本人が喋ってるんだもん。どうなってんのかね。