昨日の夜は

エリザベスカラー

9時に寝てしまった。全部たびちゃんのせいである。傷口が痛むせいかジャンプができず横移動しかできなかったたびちゃんが、大分調子が良くなってきて階段が上れるようになり、私が本を読もうと2階にある自室に行くと部屋の入り口の前でたびちゃんが待ち伏せして「一緒に寝よう」と目で誘うのである。手術というつらい目にあわせてしまった負い目からこの数日たびちゃんの言いなりになっている私はそんな誘いを断ることなどできず、仕方がないので添い寝。まだ夜の9時なのに。今どき小学生だってもうちょっと夜更かししているぞ。
おかげで変な時間に目が覚めてしまい、仕方がないのでベッドで読書。しばらく本を読んでいると、どうもそんな私の姿はたびちゃんのお気に召さなかったようで読書を止めるように促されてしまった。といってもこっちは眠くないのである。たびちゃんはいいよね、人の気も知らないでイビキなんかかいちゃってさ。こっちは全然眠れないわよ、などと不満を抱えながら横になっていたのだけれど、途中で気がついた。多分読書用のライトが気に入らなかったんだ、と。じゃケータイいじってる分には問題ないよな、でもメール送る相手もいないしいたとしても迷惑なだけだし、じゃあ今まで一切やったことのないゲームをやってみよう。…これが断然マズかった。
自慢じゃないが私はマインスイーパで1回、ソリティアで3回徹夜した人間である。以前使っていた携帯にお試し版ではいっていたRPGイース」などでは、朝、携帯を握りしめたまま目が覚めたことがある。ゲームに対しては異常な集中力を発揮する人間だ。だからPS、DSなどのゲーム機には接点をもたないように、そんな機械がこの世に存在しているなどということには気づかないフリをして生きている。手を出したら寝られなくなるのは必定だから。ちなみに私の経験から言うと、ストーリー性のあるゲームなら途中で自制することができるのだが、マインスイーパソリティアなどのゲームは止めどころが分からず、永遠にやり続けることが可能で、結果として徹夜しやすい。果たして、昨日私が手をだしたゲームはマインスイーパソリティア型ゲームであった。つまり思考力を要さず惰性で続けられるってやつね。
だから当然、次第に眠くなるんだけれど止められない。愚かな行為だと分かっていても自分を止められないのである。携帯を握りしめて暴走したまま気がつくと朝の4時。突然むくっと起き上がったたびちゃんに「いい加減寝なさい」と諌められて終了したのであった。ちょっと恥ずかしかった。
術後まだ間もないたびちゃんだが、お腹に傷口がある状況に慣れたせいか食欲は戻り、表情もリラックスしている。手術前と違うのは高いところに上れないのと、突然火がついたかのように全力疾走するクセがあるのだが、それができないことくらいか。あとはあまり声を出して鳴けないくらい。声を出すと傷口に響くからなのか、手術がショックで声が出せないのかはよく分からないけれど。あんまり傷口を舐めようとしないので助かってるが、まれに気まぐれに舐めようとするのでエリザベスカラーをはめてみた。傷口も何もない状態でこの格好をさせたのなら、何も気にすることなく「ヘンな顔」と笑えるのだけれど、流石に今はそれはできない。でも、やっぱりちょっとだけ面白い顔だ。