すきやばし次郎

すきやばし次郎に行ってきた。もう10年近く前からいずれは一度ここで鮨を食べたいと思い続けていたのだが、あまりの高額さにこれまで果たせずに来たのだけれど、先だってのNHK『プロフェッショナル』に次郎さんが出演したおりに思っていた以上に高齢である事を知って、このまま『次郎さんに行くに相応しい収入になってから』などと言って行かずにいるうちに次郎さん死んじゃうかもしれないから、元気に現役で活躍している間に行かねば、高いと言っても出せない金額ではない、と思い立って予約を入れたのである。それに、今気づいたのだけれど、私が『次郎さんに行くに相応しい収入』になる日はよく考えたら永遠に訪れない可能性が非常に高い。当たり前だよなー。働くの嫌いなんだから。
予約をしていた夜7時より5分ほど早く入店。カウンターに着席すると次郎さんの息子さんから「おまかせでよろしいですか?」と声がかかった。ダメです、なんて言えるわきゃあない。作法を知らんのだからな。我々よりも先に入店していた客は女性が一名のみで、どうやらかなりの常連の様子。怖いなー。こんな高額鮨屋の常連って、どんだけ高給取りなのだろう。
ここまで書いて、先を書くのが面倒になった。この調子で書いてたら1カン1カンどんなネタだったか書かないといけない感じだが、そんなのは面倒くさくて本当に嫌だ。ということで印象深かったネタを列挙してみる。

  • タコ 吃驚である。鮨ネタのタコなんて、存在感が薄いと言うか、いてもいなくても同じというか、あまり積極的に美味しいと感じた事はこれまでの人生で一度もなかったのだけれど、なんだか目が覚めるような驚異的うまさである。タコがこんなに美味しいなんて本当に知らなかった。

箇条書きでいくつか紹介しようと思ったが、それすらも面倒くさくなった。というのもだね、ウニ、くるまえび、いくら、穴子は無論美味しかったのである。本当に本当に美味しかった。間違いなく人生最高の鮨だった。でもタコの衝撃が一番だったのだよ。ウニやらなんやら食べておいてタコが一番印象深いって、普通ありえないだろう。結局そこがこの店の凄いところで、ネタはもちろん最上級の物を使用しているのだろうけれど、仕込みが恐らく他の店と全然違う。同じだけ上等のネタを使わせても他の店ではこのような味にはきっとならないだろう、と思わせるくらいに、仕込みが違ったのだ。高級鮨店で有名な久衛兵にも何度か行った事があり、あそこも相当美味しかったけれど、何かが確実に違っていた。次郎さんみたいな鮨屋は本当に初めてだ。握ってくれたのは次郎さんではなくて息子さんだったのだけれど、客に出すネタの仕込み具合を判断するのは次郎さんなので、息子さんが握った鮨でも十分旨いと思う。まあ、次郎さんと息子さんの両方の鮨を食べた人は、ひょっとしたら次郎さんが握った方が格段に違うと言うかもしれないけどさ。
で、気になるお会計。おまかせの19カンで、一人三万円。滞在時間は約30分だったので、10分で1万円。1分で千円消費した計算だ。1カンあたりの平均は約1579円。こんな短時間にこんなにお金を使ったのは産まれて初めてである。…高い。でも十分満足した。別にもったいないとは思わなかったね。食べてる最中は興奮して『わたしゃもう、絶対一山あてるよ、ここの鮨をまた食べるために』と宣言。冷静に考えるとやっぱり一山あてるというのは無理な話なのだが。働くの嫌いだから。一山あてなくてもまた食べにいきたいと思った。